


<独身編>
佐味 湖幸

夫婦の問題も子供の問題も、そして独身者の問題も、それぞれ決して宣教師特有の問題というわけではありません。日本にいても当然多くの課題があります。しかし、宣教地にいると,宣教師は複数の文化や価値観の中に置かれ,当然それらの影響を受け、どのように考えたらいいのか混乱したり、又、異文化のなかにいるストレスから問題が複雑化すると思われます。
宣教師子弟に関する課題については,前回2回にわたって取上げましたが、今回は子供のいない宣教師夫妻や独身の宣教師の課題について取上げましょう。子供のいない宣教師達には、宣教の働きに専念できるという利点があります.現実に宣教師の三分の一は独身宣教師で、また長期(15年以上)にわたって宣教活動を続けている人の大部分は独身の宣教師達です。特に治安が悪い地域や生活環境が苛酷な地域での宣教の働きは,独身の宣教師達によって開拓され、進められてきた例が多いのです。OMFも、1975年まではカンボジアには独身者しか送りませんでしたし、今でも山岳部族の間で長期に宣教している人には独身の宣教師が多いのです。しかし、独身者には様々なプレッシャーや葛藤があります。例えば、結婚や子供を望んでも与えられないという心理的葛藤、子供のいないこと、結婚していないことに対する社会的プレッシャーが大きくのしかかって精神的疲労となることがあります。
独身女性の場合、実際的な面でも課題があります。例えば,日本ならお金さえ出せば、何でも便利な物が手に入りますし、何でもやってもらえます。しかし,宣教地ではタイヤの交換、ちょっとした大工仕事、電気工事に至るまで自分でしなければならないことがあります。引越しの多い宣教師の生活、箱詰めはお手の物ですが、ひもをかけたり、重い箱を運んだりになると、どうしても男手が必要です。その度に、誰かに頼まなければならないのは、自立した女性としては、その人に対する申し訳なさとともに、何となく惨めでプライドが傷つくものなのです。
母国なら、責任のある仕事を十分にできる女性であっても,異文化の中にいると,些細なことでもどのように対処していいのかわからなかったり、自分の決断が正しかったのか迷ったり、優柔不断というか自分に自信のない状態に陥ったりします。
ある先輩の独身女性宣教師が既婚者の宣教師に心中をこう訴えたのを思い出します。「独身者は嫌でも一人で暗闇を歩かなければならないときがある。」この言葉は、物理的事実だけでなく、精神的現実でもあります。
主を何よりも信頼する信仰と、また信頼でき心の開ける友人をもつこと、必要な時には誰かに助けを求める謙虚さが必要です。
木下師('86 1月号)
佐味師('99 3月号)

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